3 MICE制作・運営編

安全・快適で効率的なMICEの制作・運営

第3回目は、MICE制作・運営編です。制作のフローから実際の運営、リスクマネジメントまでMICEを制作・運営するための基礎知識の講義が行われました。

日時:
2010年10月21日(木)18:00〜20:30

講師・ファシリテーター:
梶原貞幸(日本イベントプロデュース協会参事・教育人材部長)

MICEの制作フロー

MICEの制作フローは、(1)企画立案・計画策定の段階(2)準備制作段階(3)告知・集客の段階(4)会場設営の段階(5)開催・会場運営の段階(6)閉会後のフォロー業務の段階があります。

まず、制作・運営において業界構造を知ることが大事です。MICEは多種多様な業種業態の専門家を動員して作り上げます。Event専門会社、展示施工会社、マスメディア、広告代理店、印刷会社、旅行会社などに発注することにもなります。相談できる人のネットワークを持っていることが大切です。さらに今の時代ではインターネットのネット利用も大きな武器になります。

会場づくり

MICEは時間・空間という場(会場)があってその中でコミュニケーションプログラムを展開します。これを計画性を持ってやるのがMICEの本質です。

会場を考えるときには、基本条件、物理的条件、付加価値条件があります。基本条件は予算にあった会場で、時期・時間・期間を予約することができるかということです。物理的条件は、広さとか会場の施設・設備、交通の便、周辺環境などです。そして付加価値条件は、プラスアルファの魅力です。また、会場施設には施設独自の利用条件や法的な会場利用条件と主催者が決めた利用条件があります。

次にどういう会場を造るかでは、いろんな構成要素がありますので、それを勘案して造ります。

  • 「基幹施設・設備」で、受付、トイレ、休憩所、運営本部等。
  • 「展示・催事・演出施設」は展示物・台、ステージ、客席等。
  • 「営業施設」は、レストラン、ティールーム、売店。
  • 「案内・修景施設」は案内表示、サイン、モニュメント、花・植栽。
  • 「供給・処理施設」は電気設備、電話・通信設備、上下水道等。
  • 「交通輸送施設」は駐車場、バス・タクシー降車場など。

以上をもとにした会場構成の手法ですが、基本的には会場に必要な機能をリストアップします。次に人の流れ、モノの流れ、情報の流れといった視点からレイアウトします。 また、安全性、経済性にも配慮することが大切です。安全第一に考え来場者の快適性を考え、限られた予算内でどうするかを考える。会場のレイアウト・デザインでは、会場の位置、ロケーションと環境、来場者順路・動線、運営動線と情報伝達経路、プログラム配置を考えます。最初はゾーニングをしてから、平面上で配置し、平面デザイン、立面と、図面を引いていきます。基本は機能性、メッセージ性、創造性が求められます。それをもとにプロのデザイナーとレイアウト、立面図について打ち合わせします。プロの知識を生かして安全性を考えた出入り口や避難経路を確保してレイアウトをしてもらいます。

デザインと制作施工

デザインはテーマに基づいて統一性、一貫性が必要です。MICEのテーマや目的との整合性を考え、制作条件を守ることが求められます。

制作には多種多様の制作技術・技能が関係します。電飾、グラフィック、照明・音響・映像なども絡んできます。工場制作物と会場現場施工の場合もあります。最近の展示会で多いのが展示システム・モジュールです。これは経費の節減と、終了後にゴミにならないで再利用できるという利点があります。

設営・施工では、専門会社との連携作業が重要です。打ち合わせが特に大切です。会場は必ず下見をします。また設営に当たっては仮設であることを意識します。終了時に壊すことを考えて設計することもプロとしての大きな能力です。

会場演出と照明・音響・映像、運営業務

会場演出は、演出テーマをきちんとしなければなりません。統一性・一貫性のある展開。テーマは空間の演出、見た目の演出、そして時間演出です。空間演出では照明・音響・映像それから装飾・装置となります。  MICEの中では舞台が関連することも出てきますので、舞台機構についても知っておくとよいでしょう。

次に運営です。運営には4つのカテゴリーがあります。まず事務局は、全体管理、総務・経理、広報・集客、VIP接遇、情報管理、営業管理を行います。2番目にプログラムの進行・演出です。3番目に来場者対応サービス。入退場管理、交通・輸送、案内・誘導、救護、そして諸々のサービスです。4番目には会場管理、施設管理があります。警備・防災・清掃などです。この4つのカテゴリーが揃っていないと運営は大変です。これからは高齢者や障害者への対応も必要になります。  MICEの運営実務のポイントは、会場全体では来場者の入場管理、円滑な交通・輸送、中心に安全、防災、警備があります。  それからスタッフの運営ポイントは、そのMICEに対する「思い」「姿勢」が重要です。そのためには運営マニュアルを作る。マニュアルの最初にはMICEの目的、趣旨を書く。次にチームワークと運営システムの大切さ。チームワークの横の連携はトラブルを最小化する効果があります。縦の連携は効率・効果の最大化につながります。それからミーティングです。朝晩することが大事です。

運営マニュアルとリスクマネジメント

運営実務のための運営マニュアルはチェックリスト代わりに使えるようにします。  出展マニュアルには、レギュレーションを含めて開催概要、搬出入について、事務局発行物、装飾施工、運営・広報、その他のサービスも出展マニュアルには含まれています。

次にリスクマネジメントが大事です。ハインリッヒの法則では、300件のヒヤッとしたことがあると、そのうち29件がちょっとした事故で、1件は重大な事故につながるといいます。毎朝のミーティングで些細なことも報告して対応することが大切です。  リスクにはいろいろありますが、天災や国際紛争、戦争といった特殊事故はどうしようもありませんが、人災事故には対応できます。リスクマネジメントとは、危険、事故が起こりそうだと予測する。予測したら予防します。それを管理する。何か起きたときの補償もリスクマネジメントの一つです。つまりリスクマネジメントは予測、予防、管理、情報と大別されています。

WorkShop

「MICEシティ札幌!MICE誘致企画の作成」

ワークショップでは、グループごとに札幌のSWOT分析に基づき、MICEのうち、どのタイプの行・催事を誘致するかを決めるということで話し合いが行われました。論理的で説得力のある誘致企画のベースづくりです。話し合われた内容を模造紙1枚にまとめ、ワンシートプレゼンテーションをつくりました。