7 北海道の資源・素材を活かしたMICEの企画

企画ワークショップ~北海道の資源・素材を生かしたMICEの企画

最終回となった7回目は、これまでの講義を踏まえた、グループによるワークショップです。A~Eまでの5つのグループで、前回行ったじゃんけんによる発表順に従って、各グループがプレゼンテーションを実施しました。審査員は今回のMICEアカデミーの講師、梶原貞幸氏、森影依氏、玉村眞也氏の3名。15分のプレゼンテーションの後、質疑応答が行われ、最優秀賞1点が選ばれました。

Bグループ
世界パティスリー2011の誘致へ

北海道の乳製品、小麦といった豊富な素材を世界に発信し、地元産業の活性化との相乗効果を狙って「世界パティスリー2011」の札幌誘致を企画提案。Bグループは、スイーツ王国さっぽろ推進協議会に向けて、協賛提案のためのプレゼンテーションをイメージして行いました。

まず始めに北海道をとりまく厳しい現状を説明した後、日本一の生産量を誇る乳製品、お菓子づくりに適した冷涼な気候、毎年開催されている札幌スイーツコンペティションをアドバンテージに上げ、世界パティスリー大会の開催地としての環境が整っている点を強調。

世界パティスリー大会は、アメリカ、フランスで開催されているスイーツの大会で日本人が好成績をおさめていたことがきっかけとなって、アジア初のスイーツ大会として2009年に創設されたばかりのイベント。今回は2011年の2回大会を誘致しようというもので、この開催によって経済、スイーツ業界の活性化につなげていくことを目的に企画されました。

具体的な企画内容では、3つのイベントプログラムを用意。パティシエの腕を競う大会、2つ目が講演会、3つ目が市民参加型の試食会。さらにパティシエの育成、地元民の意識改革、地域資源の再発見と自信につなげられるよう長期的ビジョンも念頭において計画されていました。

開催スケジュールでは、2011年11月を予定し1年がかりでプランニングを進め、4月からはPR活動を展開して本番に備えます。地元関連業界からの協賛を受けて運営費などを検討していくということで、協議会の協賛依頼プレゼンテーションとなっていました。

Aグループ
北海道ツーリズム・インセンティブツアー

Aグループは、インセンティブツアーをアジアで手がけている企業に向けて、北海道ツーリズム・インセンティブツアーを企画しました。

企画の柱は3つで、1つ目は雄大な自然、ロケーション、温泉、四季を通じたアクティビティ、2つ目に地元で収穫する農産物や海産物、スイーツ、3つ目に環境に配慮したグリーンツーリズムを盛り込み、北海道ならではのインセンティブツアーを盛り込んだ企画を具体的に提案しました。

空港到着からウエルカムパーティ、2日目の雪を活用した冷暖房システムなどの視察メニュー、札幌近郊での農業やバター作り体験、工場見学さらに植林体験。3日目は、雪を楽しむアクティビティを殿様ツアーと名付けたオプショナルツアーを紹介。最終日の4日目はフェアウェルパーティを計画するとともに、インセンティブツアーの目的でもある、企業の結束力アップにつながることを意識した内容となっていました。

スケジュールは1年前から出発の2週間前まで設定、概算として1人あたりの旅行費用を割り出して提示していました。

Cグループ
雪の有効利用国際会議

Cグループは、SWOT分析から北海道の強みとして考えていた雪をテーマに、雪の有効利用国際会議のコンベンション創出を提案。

6月を開催時期に選定して、充実したプログラム、魅力的なイベント、一般向け公開講演会と、運営体制について説明しました。

まずは広報活動やホームページでのPR、関係団体とのネットワークを通じて研究者・技術者の参加を促し、その結果、より多くの研究者・技術者に講演いただくプログラムにより、開催地である北海道・札幌から世界へ環境技術、エネルギー技術の情報発信を行う機会とします。

魅力的なイベントとしては、雪を有効活用している施設や場所を訪ねるエクスカーション、雪を活用した農業経営や老人ホーム、マンションなど道内各地への見学コースを提案。

一般向け公開講座では、これを地元の人たちにも雪の有効活用の現状を伝える機会として捉え、さらに子供たちも巻き込み、将来の雪利用に対する子供たちのアイデアや発想を聞く機会を設けるなどの企画が盛り込まれました。

また、予算は若手研究者への旅費負担を盛り込んでいるのも特徴でした。

Eグループ
第30回医学会総会の誘致

Eグループは、札幌市長に向けた提案で、医学会総会の誘致に行政も一緒に取り組むことを要望するプレゼンテーションです。

第30回医学会総会は2019年に開催されますが、その年は開道150年であり、北海道大学医学部ができてちょうど100年でもあります。この周年を記念しての誘致に取り組もうというものです。

まず医学会総会を開催するための施設がすでに札幌にはあることを地図で表現。経済波及効果は直接で30億円、1ヶ月から1ヶ月半にわたって関連学会が開催されることから、全体で80〜100億円の経済効果があると試算。また、新規施設の整備が必要ない点を強調、誘致に対する行政負担がない点も説得材料の一つにあげていました。

さらに経済効果のほか、北海道の医療にも貢献することにもなり、地域振興につながると主張。

具体的誘致に向けては、地元事業者が共同体をつくり誘致活動を展開する仕組みを作ることにより、学会誘致は大学が中心に行うものとする従来のスタイルから、地域振興を軸にした誘致活動への転換を促す提案でした。

Cグループ
北海道からの贈り物

Dグループは、中国の保険会社を対象にしたインセンティブツアーの企画提案でした。最初に北海道のロケーションを紹介するDVDを流し、北海道へのイメージを抱いてもらった上で、インセンティブツアーの具体的な提案を行いました。

プレゼンテーションでは、観光庁の外国人観光客の北海道に期待する項目をデータで紹介。その上で、北海道の訴求できるキーワードとして豊富な自然、食材、雪とアクティビティ、そしてバラエティあふれるショッピングと4つあげ、これを網羅し、十分に満足できるディスティネーションとしての北海道が魅力的であることを示しました。さらに、北海道を選ぶことが社員のモチベーションアップにつながると説明。

具体的なツアー日程では、4泊5日で500名ずつ2班に分かれて、一方の班がツアーコースを逆回りにすることで、スムーズな運営をはかり、なおかつ中日で札幌で1000人が顔を合わせるイベントを開催するように配慮していました。

ツアー内容はルスツリゾートで雪を満喫、アクティビティ体験と同時にスキーやスノーボードのプロのエキシビジョンを堪能したり、チームビルディングで社員の結束力を高めるなどの工夫も盛り込まれていたほか、食やモデルコース、オプショナルツアーなどを用意。買い物も貸し切りプランでゆっくり品選びをできるサービスや、日本文化体験プログラムの提供も企画されていました。

また表彰式の会場、ディナーパーティのメニュー、アトラクションなども具体的に提案していたほか、iPhoneのアプリケーションを使い、GPS機能や翻訳機能を活用したサービスも提案しました。

講評

優勝チームは総合点でトップだったDチームとなりました。そして各チームに対する講評が梶原氏から話されました。

Bチームはスイーツ王国推進協議会への提案でしたが、MICEをやることで地元にお金が落ちる、地域商店街が活性化するという収益構造がわかるようにすることがプレゼンテーションのポイントだと思います。

Aチームに対しては、プレゼンテーションはふつうのトーンですることが大事です。よかったのは、先端技術的な産業観光、産業ツーリズムを盛り込んだ点です。もっと強調してもよかったのではないかと思います。

Cチームは、いかにも北海道らしいテーマでしたが、具体性がほしかった。

Eチームは、プロの世界の人たちがプレゼンしました。対象の選び方も展開もロジックも説得力があってなるほどと思いましたが、1つ不満は、政治家を相手にプレゼンするのですから方法論を語り、誘致の成功率の高さで市長を説得することがポイントだと思います。

Dチームはプロの腕を感じさせる作り方だし、プレゼンテーション画面もよかったし、データを頭に持ってきているのも説得力があったと思います。中国人は北海道の魅力、札幌の魅力を知っています。もうちょっとメリハリをつけた方がよかった。もう一つほしいのがキャッチフレーズです。一言で表現できる言葉がほしかったです。